そういえば、いっとき話題になったけど今まで読む機会がなかった『コンビニ人間』を読んでみたのだが……
これはヤバイ。なにがヤバイって、発達さんな私には共感できすぎてヤバイ。
※この記事には若干のネタバレが含まれるので、まだ読んでない人は注意!
まず主人公の「古倉恵子」は、子供の頃から普通の人の感情が理解できず、周囲をドン引きさせては、親から「どうしてうちの子はこうなのかしら」「うちの子の変なところは、ちゃんと治るのかしら」などと言われていた。
──これな!
発達障害の子供時代って、自分の行動が普通の人たちにどう映ってるとかわからんのよ。
さらに恵子は、大人になるにつれ、自分が普通の人たちにとって異物であることに気づくけど、相変わらず、どうしてそれがいけないのか、普通の人が何を考えているのか、理解とか共感はできないので、とりあえず普通の人たちの行動をトーレスして、普通の人に擬態をするようになる。
いやほんと、まんま自分のことを見ているようでヤバイ。とりあえず周囲のマネをして普通っぽく振る舞ってきたのでね、私、「温和で真面目そうな人」の演技は超得意ですよ?(内心じゃいつも毒を吐いてブチギレてるけどネ!)
恵子は「コンビニ店員」という擬態を得たことで、コンビニの中だけでなら、正常な人間として社会に溶け込むことができるようになったが、18年もコンビニ店員を続けていると、普通の人たちは「なんでアルバイトしかやらないの?」とか「結婚しないの?」「彼氏いないの?」みたいに怪しんでくる。
わかるわぁ。
ほんとコレね、私もフルタイムで働くのが無理(体力的にも精神的にも)だから、パートタイムで働いているけど、聞かれると説明に困るんじゃい!
正直に「疲れるから」と答えてしまえば「え、なにこの人……」みたいな異物を見る目を向けられるのはわかり切ってるので、「在宅ワークをしているから、掛け持ちで時短の仕事をしてるんですよアハハハハ(嘘)」という具合に、普通の人でも共感できそうな設定をでっちあげている。
普通の人たちって「てめえらにゃ関係ねえだろうが!」ってことを、興味本位でずけずけ聞いてきては、自分の物差しから外れる異物を排除しようとするからネ!
恵子の妹は、姉がいつまでたってもコンビニバイトを続けることを心配し「いつになったらお姉ちゃんは普通の人になってくれるんだろう…」なんて考えるわけだが、もうね、妹の思考に反吐がでるぅッ!
普通になんてならねえから!こっちは生まれたときから異物であって、普通の人とは構造が違うから!治るもんじゃねえから!!
こうなると、家族とかも本当に邪魔な存在でしかないなぁ。
私はもう家族なんぞと関わってもしょうもないと思っているが、その点、恵子は家族や友人との関係を維持しようとしているのだから、そこは凄いと思う。
まあ彼女にとっては「友達がいる」ということ自体が普通の人に擬態する要素の一つでしかないのだろうけど──。
恵子は正常な社会の一部になることを望んでいる、というか他に望みがない。そこんとこは、生きるために仕方なく普通の人に擬態している私には理解できない心境である。
本編の最後の方では色々な問題が浮き彫りになってしまったのだが、結局のところ、恵子は正常な人間を演じすぎて破綻した感がある。
家族とか友人なんてさっさと捨ててしまえばよかったのだ。
コンビニの同僚に「あいつは変な奴だ」と噂されようとも気にせず(もともと、恵子は他人の言うことに興味なんてなく、ただ普通を演じているだけなのだし)
ただの『コンビニ人間』という生き物に徹することだけが、恵子が唯一充足できる生き方なのだと私は思う。
恵子はただコンビニ人間として生きたかっただけなのに、誰にも迷惑をかけてないのに、普通の人たちはそれすら許さない。本当に生きづらい世の中である。
「べつに一生コンビニでバイトし続ける人生でもいいじゃん?」
とか言うと、普通の人はやれ「老後がどうのこうの」とか「社会人としてどーたら」とか「普通はあーだこーだ」とか言うわけだ。
もうね、本当に見当違いなこと甚だしい。こんなやつらには、
私たちのような発達さんは、今を生きるだけで精一杯なんじゃい!老後のことなんて考えられるわけねーだろボケがァッ!
──と、胸ぐら掴んで言ってやりたい。
この『コンビニ人間は』私のような発達障害の人間が読むと、世間への憎しみが増加されてしまう、わかりみの深い1冊である。
補足
ちなみに、Amazonのレビューを見ると、普通の人たちが普通の人の視点で、さも発達障害を分かったふうに見当違いなことを書いてるので「あー、普通の人がこの本を読むと、こんな感想になるのかぁ、なるほどなぁ〜、ヘドが出ちゃうなぁ〜、クソが!」と思えるんだぜ!
コメント
初めまして、自分も手帳3級のグレーゾーンアスペです。
ぼんたさんのブログはどの記事も「あるある過ぎて」共感できるモノばかりで救われます。
ちなみに、コンビニ人間読みました。
主人公の気持ちが痛いくらいに共感できて心に突き刺さりました。
そしてアマゾンレビューを見てると、賛否両論で、「主人公が気持ち悪い」との書き込みを見て血を吐きそうになりました。「あー、定型の人ってこうなんだな」と。
最後に、ぼんたさんの書く記事に自分はかなり救われてます。
これからもカラダをご自愛しつつ、日々を生き抜いていただければ幸いです。
これからの記事も楽しみにしております。
ではでは。
この本、定型の人のレビューは傍観者の感想だから、共感できてしまう私たちとは受け止め方が全然違いますよね。
コンビニ人間、私も主人公に共感しました。そもそもバイトで何がいけないの?
と。
それより主人公につきまとう誇大妄想男の気持ち悪さ。自分はマトモだと思って
人の弱みにつけこむ輩が一番タチが悪い。
学生時代、バイト先で「こんなの常識だよ」「知ってて当たり前」「〜するのが基本」が口癖の上司(50歳男性)から「君は世の中を知らな過ぎるね、しょーがないなぁ」と頭ポンポン、LINEを連続で送られる、帰り際に個人レッスンを強いられたりと恐怖の連続で、バイトは2週間で辞めました。
大学生にマウント取る社会人の方が非常識です。
ふつうの人と関わるとロクなことがナイ!それにしても、そのバイト上司はヤバいですネ。早めに脱出して正解だったと思いますヨ。
すごく共感しました。
ありがとうございました。
この小説はわたしたちには効きますからネ